【のび太のパラレル西遊記】感想と考察。伏線・矛盾・ラストを解説!

「のび太のパラレル西遊記」は、藤子先生が存命だったにもかかわらず、唯一脚本を書いてない異色のドラえもん映画です。

その理由は、藤子先生の体調不良と映画の企画時期が重なったからです。でも、西遊記を題材にするアイデアは、藤子先生が出されました。

この記事ではそんな「パラレル西遊記」に関する以下の内容をまとめています。

  • 管理人による「パラレル西遊記」の感想
  • 管理人による「パラレル西遊記」の考察
  • 映画レビューサイトの評価

「パラレル西遊記」を見てなにか疑問に思ったことがあれば、ぜひこの記事を読んでみてください。

『パラレル西遊記』の感想

ストーリー

まずは、「パラレル西遊記」のストーリーのをザッとおさらいしましょう。

架空の人物「孫悟空」は現実に存在したと信じるのび太。
タイムマシンで昔の中国に行き、自分そっくりの孫悟空を発見します。

その後、ひょんなことから妖怪たちに歴史が塗り替えられ、現代は妖怪たちが支配する世界に変わってしまいます。

ドラえもんたちは、歴史を取り戻すため、昔の中国へと出発。

牛魔王を頂点とする妖怪たちを倒し、人間の手に歴史を取り戻せるのか?

これが「パラレル西遊記」のストーリーです。

詳しいあらすじは以下を参照。

⇒のび太のパラレル西遊記のあらすじ

残念なところ

「パラレル西遊記」を見ていつも思うのが、のび太の描き方が少し残念だな、ということ。

冒頭からのび太のワガママがずっと炸裂して、結果的にはそのせいで妖怪たちに歴史を乗っ取られたともいえる展開です。

上記のようにのび太を描いているせいで、「歴史上の孫悟空のモデルが、実はのび太だった」という本作のSF的な構造の感動が、多少薄れているような気がしています。

主人公に十分に感情移入しないまま、その成長物語を見ている感覚のような。

あと、せっかく「ヒーローマシン」から出てきた孫悟空ののび太が、あんまり強くないのも残念なポイントです。子どものときに観て、ガッカリした記憶があります。

ほかには「パラレル西遊記」は登場するひみつ道具が少ないです。
敵をヒーローマシンに戻すのがバトルの目的になるので、空気砲とかおなじみの武器が出ないのも珍しいところ。

個人的には、ひみつ道具はたくさん登場するほうがドラ映画が楽しくなると考えています。

好きなところ

「パラレル西遊記」は、世界観が最高ですね。

ホラーな雰囲気が基調で、そこに80年代のコンピューターゲームの雰囲気が混じり合っている感じ。

物語よりも雰囲気が魅力で、何度でも見たくなるものがある。
やりすぎなホラー演出も、藤子先生の原作がないから生まれたであろう突発感があって好きです。個性の強い作品は飽きない魅力があります。

ドラ映画ファンには有名な、ドラえもんによる迷言「危険が危ない!」も「パラレル西遊記」で生まれました。

こういうエピソードがあるのも、作品にレア感が生まれていいですよね。

リンレイ

この物語のメインゲストキャラクターであるリンレイ。パラレル西遊記の原作「西遊記」では、牛魔王とその妻、羅刹女の子ども「紅孩児(こうがいじ)」として知られています

リンレイは三蔵法師のお供として仕えているものの、じつは羅刹女からスパイの役割を担わされていたことが、物語の中盤でわかります。

「パラレル西遊記」では、のび太とともに、このリンレイの成長過程も物語として描かれています。善と悪の間で葛藤する姿や、人が変わったように燃えさかる炎の城のなかを案内する姿はかなり印象的です。

ラストシーンでは、両親が死んでからも三蔵法師とともに前を向いて生きていく姿が示唆されて、感動的な結末を迎えます。

ただ、少し気になったのが、リンレイのバックグラウンドの描き方が薄い点。

三蔵法師や牛魔王・羅刹女とのエピソードがもう少しあれば、ラストに向けてより感情移入できたのになぁと思いました。

ほかのドラえもん映画(つまり、藤子作品)では、ゲストとの交流を深く描く傾向が強いので、それに慣れていると本作が薄味に感じるのかもしれません。

主題歌

主題歌「君がいるから」はドラえもん映画の主題歌としては珍しいロック調の楽曲ですね。ギター音が印象的なイントロと、1度きくと忘れないサビが特徴の名曲です。

個人的には、火焔山に突入するときにBGMとしてかかるのが好きです。
リンレイが突然リーダーシップを発揮して、振り切った感じになる展開が曲とマッチするんですよね。

耳に残って、観終わったあとしばらく歌ってしまいます。

残念ながらこの曲は、spotify・amazon musicなどのサブスクリプションサービスには、ラインナップされていません。

今のところ、正式な音源で聴く場合はCDしかないと思います。

CD音源だと、以下の2作品には『君がいるから』が収録されているようです。

created by Rinker
コロムビアミュージックエンタテインメント

created by Rinker
コロムビアミュージックエンタテインメント

『パラレル西遊記』は怖い

「パラレル西遊記」は、その怖さが魅力の半分ぐらいを占めている作品です。

初期のドラえもん映画はホラー演出が冴える作品が多いですが、そのなかでも1番怖いという声もあるほど。

個人的には、魔界大冒険、海底鬼岩城、ブリキのラビリンスも怖いですが、瞬間風速的な怖さはこのパラレル西遊記が1番だと思っています。

小さい子にうかつに観せるとトラウマになりかねないシーンがあるので、注意が必要ですね。

ポスターの雰囲はほのぼのした感じで、ホラー要素は感じられないですが…。

ママが階段を上がってくるシーン

「パラレル西遊記」で1番怖いシーンなのが、妖怪になったママがのび太の部屋へ来るときに階段を上がってくるシーン。

足元しか描写されないことで、逆に怖さが引き立っていて、異様な恐怖感に満ちています。子どもの頃に見て、すごく鮮明に記憶に残りました。

こういうホラー映画のような技法が、「パラレル西遊記」をここまで人気作にしたのだと思っています。

ママが階段を上がりながら、のび太を呼ぶ声がまた怖いんですよね。普段のママの声とは全然ちがう怖さで、やっぱり声優さんってすごいなと思います。

のび太の家での食事シーン

まだ妖怪に歴史が乗っ取られたことにドラえもんたちが気づいていない時、のび太の家でテーブルを囲み食事するシーンがあります。

新聞を広げるパパ。新聞には頭に角が生えたパパのシルエットが写り、観ている人をギョッとさせます。

また、ママが食卓に出したのはグロテスク極まりない「トカゲのスープ」。のび太たちは逃げるように食卓を去ります。これもかなり印象的で、「パラレル西遊記」を代表するホラーなシーンといえます。

ほかにも、先生が妖怪に変身するシーンや、三蔵法師やしずかが妖怪に連れ去られるシーンも子どもにはトラウマになりかねないと思います。

『パラレル西遊記』の考察

「パラレル西遊記」は、歴史上の人物「孫悟空」のモデルが、実はのび太だったという構造になっています。

のび太が過去に行って孫悟空の格好で活躍したことで、孫悟空というキャラクターが寓話として語り継がれていったということですね。

有名なフィクションを事実と思いこみバカにされたのび太が、実はその物語の主人公だったという展開は、かなりアツいと思います。

ここでは「パラレル西遊記」の伏線や矛盾点について考えてみました。

伏線

「パラレル西遊記」で見られる物語の伏線とその回収を書いていきます。

冒頭、のび太は学芸会で孫悟空の役をやりたいといいますが、ジャイアンたちに馬鹿にされてしまいます。

これはお話のラストで、のび太がジャイアンに「お前は孫悟空だよ」と認めてもらえるシーンに呼応しています。最後に役を通りこして本物の孫悟空として認めてもらえるのは、感動的な展開といえます。

最初にのび太がリンレイと会ったとき、なぜほんやくコンニャクなしで話すことができたのか?

これは後にリンレイが妖怪だったことの伏線だと言われています。ドラえもんたちは「パラレル西遊記」に出てくる妖怪とはほんやくコンニャクなしで会話できていますから。反対に、三蔵法師にはほんやくコンニャクを食べる前は言葉が通じていません。

ドラえもんたちを連れて最初に過去の中国に行ったとき、ジャイアンがのび太なの名前を呼び、正体を見破るシーンがあります。

これは物語の中盤以降、ドラえもんを中心に妖怪たちの名前を読んで捕まえる流れを暗示しています。

しずかちゃんとのび太が砂漠の夜空を見上げるシーンがあります。このときしずかちゃんは「きっと、あなたが悟空だったのよ」とのび太に告げます。これも、のび太が実は孫悟空のモデルだったという「パラレル西遊記」のSF的な仕掛けを暗示しています。

パラレル西遊記の矛盾点

「パラレル西遊記」の矛盾点としてよく語られるのが、①時間軸(タイムパラドックス)の問題と、②妖怪のはずのリンレイが現実に残って旅を続けられるのはなぜか?の2点です。

①の時間軸の問題は複雑です。歴史が妖怪に乗っ取られたなら、その時点でのび太たちも妖怪として生まれていると考えるのが普通。なぜ、のび太たちだけ歴史が変わった影響を受けないのかと考える人も多いと思います。

これに関しては、のび太たちは歴史改変の中心で、しかも歴史が完全に変わりきっていなかったから、などと説明されることが多いですね。

そもそも、過去が改変されて現在に影響が出るかどうかは、それぞれのSF作品の描き方によります。ドラえもん映画でも、作品の都合に合わせて色々な描き方がされています。

そのため「パラレル西遊記」についてもあまり深く考えず、なぜ今回はこういう描き方をしたのだろう?という視点で物語を楽しむといいかもしれません。

②なぜリンレイだけが妖怪なのに消滅しなかったのか、という点も「パラレル西遊記」でよく語られることです。

そもそもドラえもんたちの目的は、妖怪たちをゲーム内に戻すことでした。でも、終盤「ヒーローマシン」は牛魔王に踏み潰され、そのチャンスはなくなっていまいます。

その後、牛魔王が死にます。これにより羅刹女は妖気がなくなり、空中から溶岩に落ちてしまいます。この描写から、リンレイも牛魔王が死ぬことで普通の人間に戻ったというのが、ネット上での多数派の意見みたいですね。

ドラえもん自身も、牛魔王が死んだ直後に「これで妖怪どもの妖力はなくなった」という旨のことをのび太に一言説明しています。

ドラミはなぜドラえもんたちの危険を察知したのか?

終盤、ドラえもんたちが全員妖怪たちに捕まってしまい、牛魔王に食べられそうになります。

このピンチを救うのが、観音様のように突如としてタイムマシンに乗って現れるドラミです。

なぜドラミはドラえもんたちのピンチに気づいたのか?これもよく「パラレル西遊記」で疑問視される内容の1つです。

これに関して、ネット上では以下のような説明がされていました。

  • 虫の知らせアラームで気づいた
  • たまたまのび太の部屋に遊びに行ったドラミが、タイムテレビを使って状況を把握した

これらはあくまで「パラレル西遊記」を見た人の予想であって、映画本編では、ドラミ自身による説明はありません。

作品内にドラミが現れる伏線が一切なく、それによりご都合主義的とか、※デウス・エクス・マキナだと感じる人は一定数いるようです。

デウス・エクス・マキナとは、演劇・文芸用語で、「安易な解決策」のような意味あい。

パラレル西遊記は解決してない?ラスト・エンディングの疑問

「パラレル西遊記」を見て、解決していないという印象を持つ方が結構いるようです。

つまり、解決していない=妖怪を回収しきっていない!ということでしょうか。

たしかに「ヒーローマシン」は牛魔王に壊されてしまい、そのなかに回収するのは不可能になっています。

さらに、たしかに牛魔王と羅刹女は物語中で死にますが、そのほかの妖怪が全員消えるような描写はありません。羅刹女が溶岩に落ちていくシーンで、周囲にいた黒い羽の生えた妖怪たちにも消える兆候は見られませんでした。

こう考えると、たしかに未解決といえば未解決なのかもしれません。

ただし、上の「パラレル西遊記の矛盾点」のところでも触れましたが、牛魔王を如意棒でやつけたあとにドラえもんが「これで妖怪どもの妖力はなくなった」とのび太に説明するシーンがあります。

また最終的に現代に戻ったときに、のび太のママを含めた人間たちがもとに戻っているところから、妖怪たちの影響はほぼ歴史に残ってはおらず、解決したと考えるのが筋なのかなという気がします。

エンドロールで子どもたちが母親に抱きつくシーンは感動的ですよね。子どもにとっては、母親が妖怪になったことが一番つらかったはずですから。

また、「パラレル西遊記」のラストは、リンレイとのび太が対照的に描かれているのが感動を呼びます。

のび太がママを取り戻すと、リンレイは両親を失う。でも、悲しみのどん底のなかでリンレイは心から信頼できる三蔵法師と親子の絆を結ぶ。

明と暗の対比が鮮明で、印象的なラストだと思います。

『パラレル西遊記』のまとめと評価

「パラレル西遊記」は、当時の藤子先生が体調不良のため、原作にかかわらなかった珍しい作品です。それで9位とは、かなり健闘していると思います。

「パラレル西遊記」は、子どもの頃に見ると、鮮烈な印象が残る作品です。そういう体験自体が大人になって振り返ると貴重なんですよね。どんどん子ども時代の記憶が忘れ去られていくなかで、しっかりイメージとして焼き付いている。

怖いんだけど、抗いがたい魅力があって、何度も観たいと思わせる。私にとって「パラレル西遊記」はそういう作品です。

最後に、パラレル西遊記が映画レビューサイトでどれほどの評価を受けているか調べてみました。以下がその結果です。

  のび太のパラレル西遊記
レビュー数 平均点数(5点満点)
映画.com 9 3.5
Filmarks 459 3.5
Yahoo!映画 177 3.93
Amazon
Prime
54 4.5
みんなの
シネマレビュー
79 3.59
合計 778 3.80
※データ抽出は2020/7/10現在
※みんなのシネマレビューは10点満点なので2分の1して計算。

『のび太のパラレル西遊記』は5サイトの平均点数が3.8点
全40作品中9でした。
⇒歴代作品の全順位は『ドラえもん映画ランキング』にまとめています。

ぜひ、歴代のドラえもん映画で真の人気作品はどれなのかを、自分の目で確かめてくださいね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です